6月30日
今日の名句河骨の二もと咲や雨の中 与謝蕪村今日の極めつき季語
【夏越の祓】(なごしのはらえ)旧暦6月晦日に行う祓いの行事。年2回ある大祓のうち、12月晦日の年越に対し夏越と呼んだことから来たもの。この日、宮中では天皇陛下が14時から節折(よおり)の儀、大祓の儀に臨まれる。「節折の儀」とは陛下の身を清める儀式で細い京竹をその年の陛下のお歳の数だけの京竹を折る儀式で、その後、大祓の儀が行われる。その「夏越の祓」で恒例なのが「茅の輪」(ちのわ)。茅(ちがや)や藁(わら)を束ねて作った大きな輪をくぐってお祓いとする。これはもともと『備後国風土記』に見える蘇民将来の言い伝えに起源があり、「茅の輪」をくぐることで無病息災を得るといわれている。なお、「夏越」は「名越」とも書き、6月晦日に行う所と7月晦日に行う所と、神社によってさまざまである。
今日の言葉
【芭蕉布】芭蕉の繊維で織った布地。涼感があるので夏用の着尺地や座布団地などに使われる。沖縄、奄美大島の特産である。夏の季語。芭蕉布を着て夕立にぬれにけり 青木月斗
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月29日
今日の名句
蛍籠昏ければ揺り炎えたたす 橋本多佳子
今日の極めつき季語
【冷夏】
気温の低い夏をいう。「冷夏」かどうかは、6月から8月までの平均気温によって気象庁が判断する。大平洋高気圧の張り出しが弱く、梅雨前線が日本列島にとどまりつづけた時に、冷夏となることが多い。近年では1993年にそれが起き、米不足でタイ米20万トンを輸入する「平成の米騒動」といわれる騒ぎとなった。
今日の言葉
【はまなす】
山陰・北陸・東北・北海道の海岸砂地に見られるバラ科の落葉低木。紅色、まれには白色の花を付ける。中村草田男に「はまなすや今も沖には未来あり」の句がある。
今日は何の日
【ビートルズ記念日】
1966年6月29日のビートルズ来日を記念し、ファンが制定したもの。その日は台風の影響で飛行機の到着が遅れ、彼らが日本に到着したのは明け方の3時39分だった。ビートルズは日本武道館でロック・コンサートを行った初めてのバンドとなった。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月28日
今日の名句
雹晴れて豁然とある山河かな 村上鬼城
今日の極めつき季語
【氷雨】
積乱雲からしばしば雷雨を伴いつつ降る氷粒のことで、普通にいえば「雹」(ひょう)。小さな粒から大きくなると鶏卵大にまでおよび、農作物や建物、人畜に大被害をもたらす。なお「氷雨」は、近年、冬の冷たい雨や霙(みぞれ)のことをも指すようになったが、俳句ではあくまでも夏の季語として用いたい。
今日の言葉
【新牛蒡】
「牛蒡」(ごぼう)は秋の季語だが、早蒔きをして若いうちに収穫し市場に出されるものを「新牛蒡」と呼び、夏の季語とする。また「若牛蒡」「夏牛蒡」という呼び方もあり、色が白くやわらかいので、きんぴらや皿だなどに利用される。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月27日
今日の名句
笠一つしたたる山の中を行く 正岡子規
今日の極めつき季語
【山滴る】
夏の山をいう。緑なす山々の瑞々しい姿を水の滴りで形容したもの。春の「山笑う」、秋の「山装う」、冬の「山眠る」に対した言葉。北宋時代の山水画家・郭熈の「夏山蒼翠にして滴るが如く」から来ている。
今日の言葉
【風鈴売】
初夏を告げる行商というたと、「金魚売」と並んで「風鈴売」の名が挙がる。「風鈴売」が登場するのは江戸の中期頃から。彼らは物売りには珍しく売り声は上げず、ただ風鈴の涼やかな音を聞かせて人を集めたという。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月26日 七十二候 菖蒲華さく(あやめが咲きはじめる)
今日の名句
象潟(きさがた)や西施(せいし)が合歓(ねぶ)の花 松尾芭蕉
今日の極めつき季語
【黒南風】(くろはえ)
梅雨時に吹く湿り気を帯びた南風をいう。黒雲を運んでくる風ともいわれ、この湿った南風が吹く間は梅雨は続くものとされる。これに対し、梅雨明け後に吹く乾いた穏やかな南風を「白南風」(しろはえ)という。
今日の言葉
【甚平】
夏に着る男性用の簡単着。夏の季語である。短い半袖か七分の筒袖で、着物仕立てにしてあり、付け紐で結ぶため帯は不要。そこに同じ柄の半ズボンを履く。素材も麻や木綿など風通しの良いもので、少しでも夏を涼しくという工夫が施されている。なお、似たものに作務衣があるが、こちらは禅宗の僧の作業着として生み出されたもので、半ズボンではなく、オールシーズン使えるものとなっている。
今日は何の日
【露天風呂の日】
6・26(ろてんぶろ)の語呂合わせでこの日を「露天風呂の日」と定めたのは岡山県の湯原温泉。昭和62年のこと。当日は朝8時26分のお湯取りの儀に始まり、町内の旅館ホテルの内湯を解放、キャクヘノ感謝デーとした。この試みは他へも広がり、黒川、奥飛騨、耶馬溪の温泉郷などが「露天風呂の日」の無料解放を行っている。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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文字色6月25日
今日の名句
松風の中を青田のそよぎかな 内藤丈草
今日の極めつき季語
【青田】
田植え直後の田を「植田」と呼ぶが、それから日を経て苗が成長し、一面に青々と茂った田を「青田」という。「青田風」は、その上を吹き渡る風。いずれも清々しい初夏の風物。山口誓子に「真青に今も賢治の青田なり」がある。
今日の言葉
【海女】
海に潜ってアワビやサザエなどを採ることを業とする女性。夏が繁忙期なので夏の季語。伊勢志摩・能登・伊豆・安房などが有名だが、NHK の連続テレビ小説「あまちゃん」では岩手県の三陸海岸が舞台となった。
今日は何の日
【天覧試合の日】
1959年のこの日、昭和天皇と皇后が後楽園球場で巨人阪神戦を観戦。試合は長嶋と王らが本塁打を打ち4対4で9回裏を迎えた。そこて長嶋が村山実から劇的な2本目を打ちサヨナラ勝ちをした。ちなみにプロ野球天覧試合はこれが初。しかも両陛下の試合観戦は午後9時15分までと決められており、長嶋が打ったのは退席直前のわずか3分前であった。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月24日
今日の名句
青萩やいつかはりたる風の向キ 久保田万太郎
今日の極めつき季語
【夏萩】
「萩」は秋の季語だが、夏のうちから咲き始めるものがあり、これを「夏萩」と呼んでいる。ミヤギノハギがその代表。また、それとは別に、花を付ける前の青々と茂ったものを「青萩」という。どちらも夏の季語である。
今日の言葉
【草蜉蝣】(くさかげろう)
クサカゲロウ科の昆虫。体長1~2㎝。小さなトンボ形の姿をしており、全身緑色。翅(はね)も淡い緑で脈が透けガラス細工のよう。「草蜉蝣」は蟻巻を食べる益虫だが、触ると臭気を発するので「臭蜻蛉」(くさかげろう)の別名もある。葉の裏などに生みつけられる卵は「優曇華」(うどんげ)という。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月23日
今日の名句
山梔子(くちなし )や築地の崩れ咲きかくし 堀 麦水
今日の極めつき季語
【梅雨晴】
梅雨の合間の一時的な晴天のことで、「梅雨晴間」ともいう。また、梅雨が明けた後の「梅雨明け十日」といわれるような本格的な晴天にもいう。どちらも雨や曇天から解放された喜びが感じられる。
今日の言葉
【梔子】(くちなし)
アカネ科の常緑低木。夏、良い香りのする白色の六弁花を付ける。「山梔子」とも書く。秋には果実が実るが、熟しても口が割れないため「口無」の名が付いた。
今日は何の日
【沖縄慰霊の日】
太平洋戦争における沖縄戦での死者は20万人以上にものぼる。沖縄県は、沖縄戦終結のこの日を「慰霊の日」と制定、戦没者の冥福と世界の恒久平和を願う日とし、住民の休日としている。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月22日
今日の名句
道をしへ一筋道の迷ひなく 杉田久女
今日の極めつき季語
【斑猫】(はんみょう)
黒字に赤、黄などの斑点を持つハンミョウ科の甲虫。山道などで出会うと、人の歩く先へ先への飛び、振り返るようなしぐさをするので、「道おしえ」「道しるべ」の別名がある。
今日の言葉
【ビヤガーデン】
夏の訪れとともにビルの屋上などに設けられる「ビヤガーデン」は、都会の夏の風物詩。これが初めて出現したのは、昭和30年代。それから高度経済成長期の波に乗り、ビヤガーデンはサラリーマンの憩いの場として存続、今に至っている。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月21日
二十四節気 夏至(昼の長さが一年で最も長くなる)
七十二候 乃東枯る(かこそうかる)(うつぼぐさの花穂が枯れる)
今日の名句
かすかにも顔明り五月闇 鈴木花蓑
今日の極めつき季語
【五月闇】
五月雨の降り続く梅雨時の暗さをいう。昼間は雨雲に覆われて暗いが、夜はまたひとしお暗く、月も出ぬ闇夜となる。昼にも夜にも使える。
今日の言葉
【乃東(夏枯草)】(かこそう)
「靫草」(うつぼぐさ)のこと。夏の季語。6月頃に唇形の紫色の花を付けるが、その花穂の形が弓矢を入れる靫に似ているため、その名がある。また、夏に枯れるため、「夏枯草」とも呼ばれる。花穂は利尿・消炎剤にも使われる。
今日は何の日
【夏至】
二十四節気の一つで、一年中で最も昼間の時間の長い日。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月20日
今日の名句
山桃の日蔭と知らで通りけり 前田普瘰
今日の極めつき季語
【夏暖簾 簾 葭簀】(なつのれん すだれ よしず)
「夏暖簾」は夏用の暖簾のこと。木綿製もあるが「麻暖簾」が最も多く用いられる。「簾」は軒や縁先などに垂らし、風を通しつつ日差しを遮るもので、割竹を糸で編んだ「青簾」がよく見られる。「 葭簀」 は葭を太糸で編んだ簀のことで、庇などに立てかけ日除けとする。これらは三つとも高温多湿な日本の夏を少しでも快適にしようと工夫されたものである。
今日の言葉
【世界サーフィンの日】
「サーフィン」は夏の?だが、6月20日は「インタ,ナショナル サーフィン デー」で、世界の各所でサーフィン大会が行われる。日本でのサーフィンの発祥は、1000語、進駐軍の米兵が茅ヶ崎や鎌倉、鴨川などのビーチで行ったものが西城という。
今日は何の日
【世界サーフィンの日】
「今日の言葉」を参照
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月19日
今日の名句
むらさきのこえを山辺に夏燕 飯田蛇笏
今日の極めつき季語
【夏燕】
夏の燕をいう。燕は通常、春から夏にかけて2回産卵する。卵から孵ると、燕の子は3週間ほどで一人前に育ち、巣立っていく。夏に飛ぶ燕の中には、こうした子燕たちも多く混じっている。
今日の言葉
【山背】
夏、東北の太平洋に吹く北東からの冷たい風で、夏の季語。冷害をもたらすと恐れられ、餓死風、冷害風、凶作風などの異名を持つ。「山背風」「山背風」とも書く。
今日は何の日
【父の日】
父親に感謝をささげる日。6月の第三日曜日。アメリカのFathers day が日本にもたらされ定着したもの。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月18日
今日の名句
五月雨の降り残してや光堂 松尾芭蕉
今日の極めつき季語
【蟹】
「蟹」は夏の季語である。ただし、ここでいう「蟹」とは、夏の水辺、すなわち川、池、田などにいる「沢蟹」「川蟹」「ザリガニ」などをいう。これに対し「ずわい蟹」「たらば蟹」「毛蟹」などは冬の季語となる。
今日の言葉
【辻が花 帷子】
「辻が花」は室町から桃山時代にかけて行われた絵模様染め。当時は「辻が花」といえば、この染め技法を施した麻織りの「帷子」を指していた。帷子は袷の「片ひら」の意で、裏地をつけていない夏向きの単ものをいう。どちらも夏の季語となる。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月17日
今日の名句
梅雨冷えのすいれんすでに眠りけり 久保田万太郎
今日の極めつき季語
【梅雨寒】
梅雨の時分に訪れる季節外れの寒さのことで、「梅雨冷」ともいう。この時期、雨が降り続き日照時間が少ないと思わぬ低温になる。「変哲」の俳号で俳句をものしていた小沢昭一に「梅雨寒の宿の将棋は駒不足」の句がある。
今日の言葉
【おけら焚く】
「蒼朮を焚く」ともいい、夏の季語。山野に生えるキク科の植物白朮の根を陰干ししたものを漢方で蒼朮といい、健胃剤や屠蘇散ナドニ使われる。さらに、これを室内でいぶすと湿気払いに効果的とされ、梅雨時などに焚く習慣がある。
蒼朮を焚きひそやかにすまひけり 清原枴童
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月16日
七十二候 梅子黄ばむ(梅の実が熟して色づく)
今日の名句
青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川龍之介
今日の極めつき季語
【雨乞】
田植えの後、空梅雨が続くと、昔は早魃を恐れ神頼みを行った。「雨乞」「祈雨」がそれで、地方によって方法は異なるが、さまざまな呪術や祈願が行われた。雨乞な時に詠む経を「祈雨経」、その結果降った雨を「喜雨」あるいは「慈雨」という。あまり見かけなくなった風習だが、季語としては保存したい。
今日の言葉
【白玉】
白玉粉と呼ばれる米の粉を水で練り、小さな団子状にして茹でたもの。冷やした上で黒蜜や茹で小豆をかけたり、汁粉やあんみつに添えたりして食べる。
今日は何の日
【和菓子の日】
16個の菓子を供え厄除けとする行事として、室町時代から引き継がれてきた「嘉祥の祝」を全国和菓子協会が現代に復活させたもの。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月15日
今日の名句
山門の日に老鶯のこだまかな 原 石
今日の極めつき季語
【老鶯】(ろうおう)
「老鶯」といっても老いた鶯ではなく、春が過ぎても鳴いている鶯のことで、「夏鶯」ともいう。鶯は夏には山に戻るが、そこでの鳴き声は平地にいた頃に劣らず、むしろ円熟味を増すことがある。しかし、秋近くになるとさすがに「ホーホケキョ」ではなく「チャッチャッ」という地鳴きに変わる。そのあたりの変化を衰えと捉えての言葉かもしれない。
今日の言葉
【蚕豆】(そらまめ )
莢が空を向いて生るため「空豆」と呼ばれ、蚕の形をしているので「蚕豆」とも書く。また「はじき豆」「お多福豆」ともいう。ビールの強調文つまみとして居酒屋などには5月頃から出るが、それは走りで本格的なシーズンは6月。細見綾子に「そら豆はまことに青き味したり」の句があり、青木月斗に「はじき豆出初めの渋さ懐かしき」の句がある。
今日は何の日
【樺美智子忌】
1960年6月15日、安保阻止を叫ぶ全学連のデモ隊と警察隊とが国会議事堂前で激突、東大生・樺美智子さんが死亡するという事件が起きた。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月14日
今日の名句
紫陽花や帷子時(かたびらどき)の薄浅黄 松尾芭蕉
今日の極めつき季語
【通し鴨】
鴨は秋に渡来し翌春北へ帰るが、中には居残る鴨もいて、「春の鴨」「残る鴨」は春の季語である。さらに、春が終わっても営巣し雛を育てる「通し鴨」は夏の季語、真鴨の一部などである。また、一年中いて子育てをする「軽鴨」がいるが、これは留鳥のため「通し鴨」とはいわず「夏鴨」といい、夏の季語となる。
今日の言葉
【紫陽花日和】
ふつう「××日和」というと晴れの日を指すが、紫陽花だけは雨と曇りがよく似合う。気象庁のデータによれば、紫陽花の平均開花日は、札幌が7月18日、仙台が7月2日だが、東京・大阪・福岡ナドハ一致して6月7日となっている。今日などは、さしずめ「紫陽花日和」といえそうだ。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月13日
今日の名句
五月雨に鳰の浮巣を見に行かむ 松尾芭蕉
今日の極めつき季語
【鳰の浮巣】
鳰(かいつぶり)は繁殖期になると、藻や水草を集めて水面に巣を作る。それが「鳰の浮巣」で、水の増減に応じて巣も上下し沈まぬ仕掛けになっている。鳰はそこに数個の卵を産み、雌と雄とで交互に抱卵し雛を孵す。この波間に漂う小さな生命の営みは、見る者の胸を打たずにおかない。芭蕉の句は極て味わい深いものがある。
今日の言葉
【竹落葉】
「竹の秋」は、栄養分を筍に送るために葉が黄変することで春の季語だが、もう少し季節が進むと、竹は古い葉をいっせいに落とす。この時竹林は、風に舞い落ちる竹の葉のサラサラという音で満たされる。これを「竹落葉」、または「竹の葉散る」「ささ散る」と呼び、夏の季語とする。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月12日
今日の名句
川ばかり闇はながれて蛍かな 加賀千代女
今日の極めつき季語
【蛍】
「蛍」の命はわずか2週間といわれている。その短い期間に生殖相手を求めて乱舞するさまを、古人は「蛍合戦」と呼んだ。また、蛍を求めて川沿いなぞ歩くことを「蛍狩」といった。近年、環境の変化から蛍は姿を消しつつあり、それらの季語も実感を失いつつある。江戸期の俳人、加賀千代女に「川ばかり闇はながれて蛍かな」の句がある。街灯などなかった当時、川の周辺は想像以上に暗かった。それこそ深い闇である。ただ蛍の明減によって川の両岸はそれと知られる、その狭間に、漆黒の闇が流れている。
今日の言葉
【初蛍】
その年に最初に見る蛍をいう。気象庁のデータによると、蛍の初見の平均日は、福尾かが5月28日、京都が6月2日、甲府が6月5日、仙台が7月1日である。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月11日
今日の名句
大寺のうしろ明るき梅雨入かな 前田普羅
今日の極めつき季語
【梅雨入】
旧暦5月の、梅の実が熟す頃に降る雨ということで「五月雨」「梅雨」と呼ばれるこの長雨は、雑節で新暦{月11日頃に始まるものと定められている。これが「入梅」で、一般に「梅雨入り」「梅雨入」と呼ばれる。実際にはこの暦の日と関係なく、気象庁の「梅雨入り宣言」で確定するわけだが、気象庁のデータを見てみると、関東甲信の30年間の平均が6月8日頃であるから、ほぼ暦通りであるといえよう。
今日の言葉
【香水】
梅雨時になると汗の臭いが気になりだし、「香水」を使うことが多くなるため、夏の季語となっている。女性だけでなく、男性もオーデコロンなどをよく用いる。
今日は何の日
【入梅】
雑節の一つで立春から135日目の日を指す。この日の前後から梅雨に入ることが多い。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月10日
七十二候 腐草蛍となる(腐った草から蛍が生まれ出る)
今日の名句
サイダーやしじに泡だつ薄みどり 日野草城
今日の極めつき季語
【サイダー】
炭酸水にクエン酸や甘味を加えた清涼飲料水。名前はフランス製リンゴの発泡酒「シードル」から来ている。日本に持ち込まれたのは、幕末の1853年、ペリー提督の黒船来航の際に、船員が外に持ち出した「炭酸レモネード」が初という。
今日の言葉
【麦藁のストロー】
今の子供たちは知らないが、昔はストローといえば麦藁で作られたものに決まっていた。strawという言葉自体「藁」という意味である。ブラスチック製に変わり始めたのは昭和35年頃から。麦藁帽子はまだあるが、麦藁ストローは町からすっかり姿を消した。
今日は何の日
【時の記念日】
時間の貴重さ、時刻を守る大切さを知る趣旨で1920年に制定されたもの。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月9日
今日の名句
風よりも雫のものぞ軒あやめ 加賀千代女
今日の極めつき季語
【出水】
大雨により河川が氾濫することをいい、梅雨時のそれを「梅雨出水」あるいは単に「出水」と呼んで夏の季語とする。これに対し、春の雪解による洪水を「春出水」、秋の台風による洪水を「秋出水」と呼んで夏の「出水」と区別する。
今日の言葉
【潦】(にわたずみ)
強い降雨などによって地上にたまり流れる水をいう。季語ではないが、古歌によく見られる言葉。排水設備の整った現代では、あまり見かけなくなった光景。
今日は何の日
【雨の特異日】
偶然とは思えない高い確率で定まった気象現象が起こる日を「特異日」という。本日は雨の特異日にあたり、東京では57%の確率で雨が降る。
【ロックの日】
1950年代後半頃から始まった音楽の新しい潮流を、記念する日。6・9(ロック)の語呂合わせから来たもの。各地でイベントが開かれる。自由・愛・平和・反骨といったロック精神を想う日でもある。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月7日
今日の名句
菩提樹の並木あかるき白夜かな 久保田万太郎
今日の極めつき季語
【白夜】
深夜になっても光の散乱で薄明かりが続く、あるいは一晩中太陽の沈まない現象をいう。北欧など極地点に近い地域で見られるものだが、なぜか歳時記に取り入れられており、夏の季語となっている。実際は、日本において一番昼の長い夏至でも、北海道根室で日没19時2分、日の出3時37分であり、「白夜」にはほど遠い。『知床旅情』の「白夜は明ける~」の表現は大げさなのである。
今日の言葉
【ソーダ水】
炭酸がスを含んだ発泡性の飲料。無味なものはプレーン・ソーダといい、洋酒を割るのに用いる。また、甘味や香料を加えて清涼飲料水にもする。富安風生の句に「一生の楽しきころのソーダ水」がある。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月5日
二十四節気 芒種(穂のでる穀物の種を植え付ける)
七十二候 蟷螂生ず(かまきりが姿を現す)
今日の名句
六月を奇麗な風の吹くことよ 正岡子規
今日の極めつき季語
【雪解富士】
5月から6月にかけ、雪解によって所々に地肌を見せ始めた富士をいう。その後も地肌をの割合は増え、旧暦5月、今でいう6月中頃ともなると、いわゆる「五月富士」となり、さらには「夏富士」となって、すっかり雪が消え、黒々とした雄大な姿を見せることになる。
今日の言葉
【枇杷】
「枇杷」はバラ科の常緑高木。「枇杷の花」は冬の季語。11月~12月頃に白色五弁の花を咲かせる。それに対し「枇杷の実」は夏の季語。6月頃が旬で、スーパーや八百屋の店先に黄橙色の果実が並ぶ。なお、枇杷の葉は季語ではないが、薬用となり、ビワの葉療法やビワ茶などに利用され、「枇杷葉湯」という夏の季語も生んでいる。
今日は何の日
【芒種】
二十四節気の一つ。穂の出る穀物の種を植えつけるの意。種蒔きに適した時期である。
【世界環境デー・環境の日】
環境保全に対する関心を高め啓発活動を図る日として国連により制定。日本では「環境の日」の名で制定。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月8日
今日の名句
消ゆる時虹青色をのこしけり 軽部鳥頭子
今日の極めつき季語
【虹】
「虹」は一年を通して見られるが、夏の夕立後のものが鮮やかなため夏の季語とされ、他の季節のものは「春の虹」「秋の虹」「冬の虹」と区別される。虹は自然が生み出した奇跡的な現象で、それを夢や希望に結びつける人は多い。虹の透明感、神秘性、すぐ消えてしまう存在感 の儚さが人の心を惹きつける。
今日の言葉
【うたかた】
「水の上に浮かぶ泡」のこと。季語ではないが儚い喩えに使う美しい言葉。「泡沫」(うたかた)と書くことが多い。フランスの作家ボリス・ヴィアンに『L E cume des jours』という小説があるが、日本では「日々の泡」「うたかたの日々」の二つに邦訳されている。
今日は何の日
【世界海の日】
国連が2009年からスタートさせたもの。「海を大切に。自然の環境を守るのは世界中の人々の責任」というのが世界海の日の主要テーマ。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月6日
今日の名句
死近き裸の子やな枇杷を食ふ 長谷川零餘子
今日の極めつき季語
【葛餅】
「葛餅」というと、古来、「葛餅を原料とし、それを熱湯で練り、型に入れて冷やし固め、黒蜜と黄な粉をかけて食べるもの」とされてきた。しかし葛餅の生産には限りがあり、関東では早くに原料を小麦粉でんぷんに変えた。色が透明でなく白濁して見えるのはそのため。名前も「葛餅」とせず「久寿餅」「くず餅」などとした。ただし、一年以上かけて発酵させた小麦粉でんぷんを使用しており、関東のそれは歴とした発酵食品である。亀戸天神、川崎大師、池上本門寺の参道などで求めることができる。
今日の言葉
【虎魚】(おこぜ)
カサゴ科の魚で別名オニオコゼ。夏が旬で刺身や空揚げなどにされ、夏の季語となっているが、冬季にも鍋物で食される。鈴木真砂女に「鯛は美のおこぜは醜の寒さかな」の句がある。
今日は何の日
【おけいこの日】
昔から「6歳の6月6日に習い事を始めると上達する」といわれ、この日から稽古を始める風習があった。楽器の日、邦楽の日、いけばなの日などか定められている。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
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6月4日
今日の名句
市中は物のにほひや夏の月 野沢凡兆
今日の極めつき季語
【仏法僧】
ブッポウソウ科の「仏法僧」は、昔から「仏・法・僧」と鳴く尊い鳥だと言われてきた。ところが1935年に、そう鳴いているのはフクロウ科の「木葉木莵」(このはずく)であることが判明した。そこで以降は仏法僧を「姿の仏法僧」、木葉木莵を「声の仏法僧」と呼ぶこととなった。
今日の言葉
【毒消売】
「毒消」は食あたりや腹痛などに用いられる越後の丸薬。「毒消売」は、その丸薬を売り歩いた人々。多くは未婚の女性が行い、 紺絣に手甲脚絆という姿で関東地方の家々を回った。三国峠を歩いて越え、盆や秋祭りに合わせて故郷に帰るまでの半年にわたる行商。今では見られなくなった夏の風物詩。
今日は何の日
【虫の日】
漫画家・手塚治虫らの呼びかけで始まったという虫の日。この日は全国で虫にちなむイベントが行われる。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月3日
今日の名句
憂き我をさびしがらせよ閑古鳥 松尾芭蕉
今日の極めつき季語
【郭公】(かつこう)
「カッコー、カッコー」という鳴き声で区別できるが、姿かたちは「時鳥」に瓜二つのホトトギス科の夏鳥である。托卵を行うことも時鳥と同じで、自分では巣を作らず、他の鳥の巣の中に卵を托して育てさせる。「閑古鳥」という別称は、哀愁のあるその鳴き声から来たものか。
今日の言葉
【明けの明星】
明け方に東の空に輝く金星のことで赤星ともいう。金星は真夜中の空には現れず、明け方と夕方にのみ観測でき、明け方に見えるのが「明けの明星」、夕方に見えるのが「宵の明星」である。季語ではないが、親しみのある言葉。
今日は何の日
【いのりの日】
1991年のこの日、長崎県雲仙普賢岳で大火砕流が発生、警戒中の消防団員、警察官、取材中の報道関係者などが巻き込まれ、死者40人、行方不明者3人という犠牲者を出した。火砕流がはじめて鮮明な映像として記録され、世界が注目した。長崎県島原市はこの日を「いのりの日」と制定している。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P文庫
6月2日
今日の名句
谺して山ほととぎすほしいまま 杉田久女
今日の極めつき季語
【時鳥】(ほととぎす)
田植えの時期を告げるので「時つ鳥」の異称もある。「時鳥」だが、昔の人の評価は高く、「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」(道元禅師)と夏の代名詞にもなっている。時鳥は初夏、南方から日本に渡ってくる。その「初音」を人々は鶯と同じように珍重する。「特許許可局」「本尊カケタカ」などと聞 聴き做せる声は、甲高く鋭い。鳴き方は、口を精一杯に開け、赤い喉の奥を覗かせる。「鳴いて血を吐くほととぎす」といわれる所似である。
今日の言葉
【谺】(こだま)
「谺」は「木霊」とも書く。また「山彦」ともいう。その時が示すように、古人は山に反響して返ってくる「谺」を木の精、山の精が返事をするためと考えた。季語ではないが味わい深い言葉。
今日は何の日
【横浜港・長崎港開港記念日】
1859年のこの日、日米修好通商条約により開港したもの。これを記念して横浜・長崎では各種のイベントが行われる。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫
6月1日
今日の名句
亡き人に肩叩かれぬ衣がへ 久保田万太郎
今日の極めつき季語
【走り梅雨】
本格的な梅雨が始まる前、5月の末から6月の初め頃に、梅雨に似たぐずつく天気の続くことがある。これを梅雨の兆しと見て「走り梅雨」、あるいは「迎え梅雨」という。
>今日の言葉
【麦雨】strong>
今日は七十二候で「麦秋至る」、麦が穂をつける時期にあたる。この麦が実る頃に降る雨を「麦雨」といい、この頃に吹くカゼヲ「麦嵐」あるいは「麦の秋風」という。麦秋、麦雨、麦嵐、麦の秋風、いずれも初夏の季語である。
今日は何の日
【更衣の日】
この日、衣服を夏服に着替える。平安時代に始まった風習だが、6月1日に定まったのは新暦となった明治時代から。
夏生一暁氏著「日々の歳時記」より
PH P 文庫